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ナント公演

1月28日~2月4日まで、フランスのナントで開催されているラフォルジュルネ音楽祭に行って参りました。
山田和樹指揮の横浜シンフォニエッタのメンバーとして。日本のオーケストラとしては、本場のLFJ(ラフォルジュルネ)には初参加ということです。

詳しくはfacebookに「横浜シンフォニエッタ」のページがあり、写真もたくさん載っていますのでご覧いただければと思いますが、ここには私の感想や、個人的に忘れたくない思い出などを書き綴っておこうと思っています。
かなり長くなるので、お時間のあるときに読んで頂けたら嬉しいです。

今回の公演は、5日間で7公演、11曲というハードスケジュールでした。また、LFJのテーマがフランスとスペインだったので、地元フランスの聴衆の前で、フランス音楽を演奏しなければならないプレッシャーは並々ならぬものがありました。

1月28日 成田を出発。フランスへ。この日は千葉方面は雪が降っており、成田空港は除雪作業のため2つの滑走路を順次閉鎖していました。同日中にナントに着く手段として、11時5分発と12時45分発の2便が選べたのですが、パリでのTGVへの乗り換えに余裕がある早い便を選んだのですが、予定が大きく遅れて13時少し前にようやくフライト。12時45分の便も直後にフライトしたそうです。
今回航空会社は、JALだったのですが、恥ずかしながら日本の航空会社で海外へ行くのは初めて。機内食の美味しさとビールの豊富さ(エビス、プレモル、ラガー、スーパードライが揃っている)に驚きました。
パリから走ってTGVに乗り継ぎナントへ。ナントは東京よりも暖かく、湿度も高くてとても過ごしやすい気候でした。ただ、我々の滞在中はほぼ雨だったのですが。
ホテルにはキッチンもついていてとても快適。事務局としての最初の仕事は、配布されたミールクーポンの束を各奏者に分けること。ナント滞在中は、朝食はホテルで、昼食、夕食はLFJの会場で食べることが出来ます。

1月29日 練習日
9:00にホテルのロビーに集合しメンバーにミールクーポンとバックステージパスを配布。日本のLFJでもそうですが、出演者パスがあればどんな演奏会にも入場できるのです。
10:00~15:00
本番指揮者の山田和樹くんはこのころパリ室内管弦楽団とリハーサル中だったので、アシスタント指揮者でライプツィヒからかけつけてくれた高井優希さんの指揮のもと早速練習。
リハーサル会場は、本番会場の目の前にあり、小ホールのような劇場のような、響きの少ない場所でした。
ここでは昼食をはさんで、ドビュッシー小組曲、ファリャ三角帽子、ラヴェルのクープランの墓、ビゼーの交響曲を練習。高井さんの練習は、良い意味で代役指揮者としての役割をきちんと果たすものでした。
昼食会場には、豊富な種類のオードブルとメインディッシュが用意されていて、我々の滞在中の健康を守り、食欲を充分に満たすものでした!もちろんワインも。

20:00~23:00
指揮者の山田くんがパリから到着。ちょっとハプニングがあったようですが、元気にリハーサル開始。翌日のプログラム、つまり我々のデビュー戦となる、ドビュッシーの神聖な舞曲と世俗的な舞曲、ロドリーゴのアランフェス協奏曲、そしてファリャの三角帽子を練習。このプログラムでは私はコンサートマスターだったのでとても緊張していました。山田くんからは弦楽器の奏法について細かく指示があり、ドビュッシーのボーイングは彼と横シンのコンビならではのとても独特なものが採用されました。オーケストラの音色がどんどん変わっていきます。スペイン人のギタリスト、エマニュエルを迎えてのアランフェス協奏曲は決して大暴れしない大人の音楽。ソリストのかっこよさにため息をつきます。なんとも男の色気のある音色!


1月30日 公演1日目
10:00~17:00 リハーサル
前日に引き続き、この日の公演のリハーサルに加え、翌日以降のプログラムもリハーサル。ドビュッシーのハープのソリストが怪我で出演出来なくなると言うハプニング!急遽プログラム変更か、と思いきや、代役のハーピストが登場。イザベル・モレッティさんというハーピストはフランスでとても有名な方のようで、難曲を見事に暗譜で演奏。フランス音楽に不慣れな私をどれだけ導いて下さったでしょう…。みずみずしい音のシャワーをハープの間横で浴びまくりました。

20:30~ コンサート1
神聖な舞曲と世俗的な舞曲→三角帽子→アランフェス。
1度ホテルに帰って休んでから、再び会場で夕食をとり、500人くらいの小さなホールで演奏会。
1回目の演奏会の成功は、今後のLFJ中の我々の演奏に大きくかかわるものだから、と緊張していたら、同室のフルーティストから「なんで緊張するの?ただ音楽をやればいいんだよ。大丈夫。」と言われて気が楽になる。(とはいえ、彼も絶対緊張していたと思う!)
我々のデビュー戦はとんでもない熱演になりました。特にファリャでは指揮者とオーケストラが燃え上がり、お客さんからも熱い拍手を頂きました。

うすいGM

写真の中央の人物は、ピアニストにして、我らが横浜シンフォニエッタのジェネラルマネージャーU氏。
今回の公演ではファリャのピアノを担当。ソリストとして、室内楽奏者として大活躍の彼だがオケ中ピアノは初めてで、指揮者から随分と指示を受けていました。本番はさすがの集中力でオーケストラを見事に牽引していました。さすが!


1月31日 公演2日目
10:00~15:00 リハーサル
前日の成功を受けて、オーケストラのボルテージは上がり調子。フランスの空気がそうさせるのか、LFJの空気がそうさせるのか、今までオーケストラからは出なかったような音が次々と出てきます。
そう、LFJでは、とにかくその音楽祭の熱気に包まれ、雰囲気の中で演奏して行くのが最善の道だとみんな感じ取ったようです。
最初にロドリーゴのアンダルシア協奏曲のリハーサル。4人のギタリストが並んで演奏するのは圧巻。それゆえこの曲は「四兄弟」というあだ名で呼ばれるようになった。ヴィヴァルディの協奏曲からの影響をモロに感じる作風。オーケストラではトランペットが大活躍。わざと調子っぱずれに書かれた部分もあって面白い。
続いてはサンサーンスのピアノ協奏曲第2番。アンナ・ケフェレックさんをお迎えして。以前芸大で公開講座を開いたことでそのお名前は知っていたものの実演に接するのは初めて。手作りの料理で最高のおもてなしをされているような演奏。素晴らしかった。
その後、当夜のプログラムである小組曲、ラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌ、ビゼーの交響曲を練習。ビゼーは我々のデビューCDに納められた曲なだけに、みんな大張りきりで演奏しました。
続いては翌日のプログラムであるシャブリエのハバネラを練習。5分足らずの小曲ながら、なかなか形にならない。メンバーから次々に意見が飛び交います。
「ハバネラのリズム感が違う」「フレーズが繋がらない」「色気が足りない」などなど。指揮者はそれらの意見をどんどん取り入れて形にしていく。
「小さいくせに、やたら威力があるから、むしろハバネロだね。」
こういうリハーサルが出来るのも横浜シンフォニエッタならではだと改めて嬉しく思いました。

17:00~ コンサート2
小組曲→パヴァーヌ→ビゼー
LFJでは珍しい、ソリスト無しのプログラム。800人の中ホールは満席。オーケストラの実力が試されます。
小組曲で既に熱い拍手を頂き、ビゼー終演後はブラボーの歓声とともにスタンディングオーベーションを頂く。メンバーの何人かは涙を流して喜んでいました。拍手が鳴りやまず、ビゼーの交響曲の最後30秒を演奏。
終演後にロビーを通ってレストランへ向かう途中、たくさんのお客さんから声をかけられる。演奏者と聴衆の導線が一緒なのもLFJの醍醐味なのかもしれない。たくさんの賛辞を頂く中、初老の男性からいただいた"It was best concert in my life!"という一言は本当に嬉しかった。
その後ホールのレストランで夕食。ようやくワインにありつける!たくさんワインを頂き、何人かは夜の街に繰り出してビールも楽しんでいたようでした。


2月1日 演奏会3日目
16:00~ コンサート3
神聖なる舞曲→三角帽子→アランフェス
1日目と同じプログラムでの演奏会。コンサートマスターの席からは、この数日間でのオーケストラの成熟がよくわかる。山田くんの指揮もどんどん奏者の自由を委ねるようになっていきます。ドビュッシーは引き続き代役のイザベルさんが演奏。ファリャでは前回よりも落ち着いた演奏、と思いきや最後の最後で火が付く熱演!アランフェスではエマニュエルさんのソロを存分に楽しめる余裕も出て来ました。アンコールにアルハンブラの思い出をソロで演奏してくれました。ギターって、こんなにも美しいレガートが歌えるんだな…。と感動。華やかだけれど渋くてずっしり来る演奏。

18:00~23:00
公演の後、夕食をはさんでリハーサル。
ミヨーの屋根の上の牛は、明日本番にも拘わらずここで初めてのリハーサル。これも山田くんの作戦だったそうです。一気に仕上げて、この作品のコラージュ感を出したいと。
英語ではThe Ox on the Roofという作品。山田くんは、以前この曲をやったときに Beaf on the Roof と言い間違えた失敗談を皆の前で披露。その後、この曲はビーフとみんなから呼ばれるようになりました。
脳内にエンドレスで流れるようなこの作品、帰りのバスの中ではみんなこの曲を口ずさんでいました。

ところでLFJでは10近い会場で同時進行で演奏会が行われており、出演者は会場を移動して出演することもしばしば。にも拘わらず、演奏会自体が延長して開演が遅れたりもすることがあります。
我々のツアーに同行してくれたステージマネージャーのA女史、素晴らしい働きで地元フランスのステージ関係者から「世界一のステージマネージャー」と絶賛されるほど。彼女の迅速な舞台転換のおかげで、我々のオーケストラは、押していたスケジュールを戻す役割も果たしました。
小さな身体でハープを1人で担いで舞台転換をする姿に、聴衆から拍手が起こる一場面も…。

2月2日 本番4日目
13:45~ コンサート4
パヴァーヌ→シャブリエ「ハバネラ」→「四兄弟」
一番大きな1900の会場での演奏会。テレビ収録、インターネットでの生中継も入るということで緊張感のある演奏会でした。パヴァーヌの冒頭のホルンソロ。美しいヴィブラートを伴った音色が大きなホールに静かに溶けて行く、至福の一時でした。ホルンの友田さんは、今回のLFJ中、5回のパヴァーヌを演奏することになります。

16:00~20:00
この日のリハーサルはいつもの会場では無くて、近くにあるナント音楽院のベルリオーズという広間を借りての練習でした。
席について音を出してびっくり。フランスの音がする…。正直、一番自分の出す音に感動したのはこの瞬間かもしれません。オーケストラのリハーサルは早めに終わったので、自分のソロの曲を練習。何度ひいてもしっくりこなかったフォーレの1番ソナタの終楽章を弾いて、ようやく何かが見え始めたような気分になる。フランクのソナタ、ショーソンのポエム…。ポエムは2月末に弾く予定だったのだけど、ストラヴィンスキーのイタリア組曲に変更したんだっけ。こんなことになるならポエムにしておけばよかったかな…とちょっと後悔。

22:15~コンサート5
パヴァーヌ→サンサーンス:ピアノ協奏曲2番→ビーフ
中ホールでの演奏。サンサーンスではケフェレックさんの美しい音色に酔いしれる。1楽章は少しかみ合わない部分もあったけれど、だんだんとオーケストラも一体となっていく。アンコールではシャミナードの作品かな、初めて聞く曲だったけれど、静かで美しかった。ピアノからあんな音が出るなんて…。
後半のミヨーはオーケストラの若さが爆発した演奏になりました!まるで不思議な夢を見ているような20分間。テーマが12調全てに転調して繰り返されるという、まさにめまぐるしい作品。
ギロという擦って音を出す打楽器が大活躍するのですが、張り切って演奏しすぎて木のバチがどんどん削れてしまったそうです。もう少しで折れるところでした、と打楽器奏者の話。
それにしてもソリストのケフェレックさん、夜間の演奏会にも拘わらずミヨーも客席で聞いて下さり、我々に暖かい拍手を送って下さいました。ありがたいことです。

2月3日 本番5日目

11:00~ ミシェル・コルボ指揮のローザンヌ室内合唱団、フォーレのレクイエムを聴きに行く。
それぞれが普通に、自然に歌っているのに、最高に音楽的で美しい。美しいことが必然であるような。こんな声、日本人には絶対出せないんじゃないか…なんて言ってしまったらおしまいなんだろうけれど…。
SATBそれぞれ8人くらいずつのイーブンな編成。ソプラノのソロは合唱団員が担う。これまた自然で素晴らしい。
途中、合唱団の女性が具合が悪くなり(?)退場するハプニングも…。長丁場のLFJ、こういうこともあるのでしょう。

13:00~15:00 リハーサル
最後の演目であるラヴェル:クープランの墓のみをリハーサル。
山田くんから冒頭のオーボエの難所に「いったいいつからオーボエの音は変わったんだろうね。21世紀のコンクールで優勝するための音では無くて、20世紀初頭のオーボエの音で吹いて欲しい。どちらかというと無防備な感じで…」などなど最終日にも拘わらずたくさんの注文が。
特に2曲目のフォルラーヌには相当な時間を費やしました。
「この曲は長いから冒頭のフレーズがしっかり紡がれないとお客さんは退屈するんじゃないかな。」「スタッカートは常にアクセントに向かっていって、テヌートは立ち止まるような感じ…?」またも奏者間からたくさんの意見が飛び交います。
リゴードンの冒頭「もっと空気を入れて!」他、今までイメージすることの出来なかった音色のパレットがどんどん増えていくような素晴らしいリハーサル。今日で終わりなのが本当に残念。

17:15~ コンサート6
パヴァーヌ→シャブリエ「ハバネラ」→「四兄弟」
前日に引き続き1900のホールでの演奏会。ハバネロは名演だったと思う。この曲が隠れた名曲であったことを思い知る。でも日本ではどうなんだろうな…色々な想いが駆け巡りました。

19:15~ コンサート7
パヴァーヌ→クープランの墓→ビゼー
いよいよ最後の演奏会。800のホールに移動する道すがら、現地のステージ関係者より「今日は君たちのステージで終わりだから、2時間アンコールしてもいいよ!」と言われる。何か日本の曲を準備してはよかったな。とはいえ、この時点まで全く余裕はなかったのだけれど。
ビゼーは前回を上回る演奏だったように思います。ここまで我々がこだわってきた音色へのこだわりと、燃え上がるような情熱が化学反応を起こし、異様なボルテージに。予想通り、と言ってはいけないのだろうけど、割れんばかりの大拍手をいただく。
アンコールに急遽ハバネロを。この曲、また演奏することはあるのだろうか…。次に演奏する時は、必ずナントのことを思い出すだろう…。そしてさらにビゼーの終楽章をまるまるアンコール。
拍手は鳴りやまない。こうして全てのコンサートは終わったのでした。

2月4日 日本へ。
パリに早く向い、束の間の観光を楽しんだメンバーもいたようですが(中には4時間強で、オペラ座→オランジュリー美術館→ノートルダム大聖堂→シャンゼリゼ通りでディナー→凱旋門という素晴らしい観光をした方もいた模様)、私はナントに残りゆっくりと観光。
ナントの有名レストラン「シガル」で昼食。シガルとは蝉のことだそうです。

ナントのレストラン

フォアグラのパテや、マグロのソテーなどを堪能。ナントはヨーロッパでも有数のシーフードがおいしいところだとか。
その後はナントの街を散策。前日まではホテルとホールしか知らなかったので、こんなに見どころがたくさんあるって知らなかった。
TGVでパリに出て、エールフランスで日本へ。とても空いていたので4席並びの席を独占出来たため、エコノミークラスにも拘わらず横になって熟睡して帰国しました。

今回お世話になった皆さまと、フランスの素晴らしい聴衆に心からの感謝。
この日々を糧に、また前進して行こうと思っています。

また、こんな長い日記を読んで下さった方、ありがとうございました。
こちらのブログは、最近は全く更新していなかったのですが、少しずつでも書いていきたいと思っています。
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プロフィール

satoki..ng

Author:satoki..ng
長岡聡季
ヴァイオリニスト、ヴィオリスト
音楽博士

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Satoki Nagaoka
PhD, Violinist, Violist, Conductor

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