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室内楽科おさらい会

芸大での非常勤講師も3年目、意欲旺盛な学生たちと一緒に勉強させて頂いて、充実した日々を送っている。

今日は、前期のおさらい会の第2夜を聴いてきた。
ブラームス、ベートーヴェン2曲、フォーレ、ヒンデミットと、5曲のソナタを立て続けに聴くのは、さすがに疲れるだろうと覚悟をしていたのだが、全く集中力が途切れることなく、2時間30分にも及ぶプログラムを聴き終えた。

このところ、立て続けによい演奏に接することが多く、同業者としては焦りや羨ましさを感じたり、或はそんなことを超えて深い感動や極度の興奮覚えたりもするのだが、
今日のおさらい会が印象に残ったのは、出演した5人の弦楽器の学生たちがそれぞれに勉強の成果を発揮して、素晴らしかったというだけでなく、偉大な作品を5曲聴き、その時代も国も少しずつ異なる作品たちが最終的に一つの世界を描き出しているように聴こえたから、でもあった。

以下、忘備録のように、今日の感想を書いておこうと思う。
かなり主観的に書いている。当然異論もあるだろうし、音楽史的には間違っているという指摘も受けることもあるだろうが、今感じたことを書き記しておきたく、久々にこのブログに雑文を書き連ねることにした。

ベートーヴェンの音楽には、何か絶対的な価値観に支配され、その中で人生をいかにおくるべきかという強靭な哲学がある。それゆえ、こころ揺さぶられ、励まされたり、共鳴させられたり、時には否定的な感情を覚えることすらあるのだが、
啓蒙主義時代まっただ中の初期の作品となると、語法は決して難しがらずストレートに心に響いてくる。
交響曲のようにパブリシティの強いジャンルとは違い、室内楽曲の場合は作曲家のメッセージはより親密に届く。
それ故か、特にヴァイオリンソナタというジャンルにおけるベートーヴェンの多彩さは、目を見張るものがあるのだ。
今日聴いた3番には、変ホ長調は英雄的な調性だという先入観を忘れさせる、快楽的要素が強い。
それは、音を急速に連ねていくスピード感や、終楽章のどこか田舎っぽい踊りに象徴的だ。
続いて聴いた7番は、ハ短調の切迫感の中に、光を見出そうとする苦悶がある。交響曲には置き換えられないような、謎めいた語法が散見されるにも拘わらず、内面を貫くメッセージは強烈だ。

ここで、1曲目に演奏されたブラームスを思い返す。
確かに、絶対的な価値観は音楽の重力として存在してはいるのだが、それに対峙する人間としての心情が、より赤裸々に綴られていることに気づく。
私は、そんな彼の音楽を長らくどうしても理解できず苦しんでいたのだが、歳を重ねていくごとに共感する部分が増えてきて、少し安心している。
こうあるべきもの、正しいと信じられているもの、それらに対する疑問や戸惑いが、とても解りやすく表現されていることにようやく気付けてきた。
勿論、そこがブラームス作品の重要なファクターだとは断言できないのだが、ベートーヴェンを通してみると、そういった姿がよりはっきりと見えてくる気がしてならない。

そしてフォーレでは、その絶対的な重力から解放されようとする、音楽の自立心を見る。
彼の音楽語法、特にソナタのように伝統的な形式の中での音楽の構成は、フランスの並み居る作曲家たちの中でも、最高に洗練されていると思う。
むしろ、その作曲上のテクニックが素晴らしすぎて、そこに耳を奪われてしまうような作品すら、特に後期には多く見られるように思う。
第1ソナタの第1楽章は恐らくソナタ形式で書かれているのだろうけれど、これをベートーヴェンの延長線上で捉えようとすると、第1主題に対するアンチテーゼのようなものはいったいどこにあるんだろうか、そもそもこの楽章の第2主題はどれなんだろうか、などと面食らうことになる。
次第に彼の世界に引き込まれていき、全楽章聴き終えた時には、新しい音楽としてのあり方をすっきりと見せられた気がして、深い感動を覚えるのだ。

最後にヒンデミット。
ここで再び、重力を持った音楽へ戻ってくる。
Op. 11-4を、フォーレの後に聴いたことは、得難い体験だった。
どこかのフランスの作曲家の作品?と言いたくなるような幕開けに疑問を持たずに吸い込まれ、
一貫した強靭なエネルギーを保ちながらも、多彩なキャラクターを行き来しつつ終結に向かっていくその作品のバックグラウンドには、やはりベートーヴェン、ブラームスと、ドイツ音楽の伝統が意識してきた重力の存在がある。
全楽章が連続されて演奏されるソナタの仮面を被っているが、作品全体が1つの巨大な変奏曲のようにも聴こえてくるのだ。

こうして全5曲を聴き終え、クラシック音楽の歴史はなんとも奥深いものだろうと、ため息をついた。
多種多様な作品がそれぞれに作用しあい、その組み合わせ如何では、更なる新しい世界が空間に生み出されるということを改めて認識した。そんな演奏会であった。
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長岡聡季
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