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岡山潔弦楽四重奏団 第3回演奏会

弦楽四重奏は、もともとは演奏する人が楽しむための作品だった

という話をよく耳にする。

定かではないものの、ハイドンが最初に作曲した弦楽四重奏は、さる身分の高い方から「ヴァイオリン2本と、ヴィオラとチェロで何か曲を書いて欲しい。」という依頼にこたえただけのものだったらしい。

通奏低音が幅をきかせていた時代と、古典派といわれるシンプルな音楽が流行りだす時代の、ちょうど過渡期にあたる。

ハイドン自身も、まさか弦楽四重奏という編成が、自らの中で発展して行くとは考えもしなかったのだろう。
ハイドンは、初期の四重奏曲は、例えば管楽器なども交えた室内楽曲と同様に「ディヴェルティメント」の題名で作曲しているのだから。

今日の演奏会は、前半にハイドンとモーツァルトの初期の四重奏曲、後半にベートーヴェンの初期の四重奏曲が並んだ。

ハイドンの音楽は、創意工夫に満ちている。そして通好みだ、とも言われる。
たしかに、あまたの古典派音楽を山ほど聴いている人ほど、その面白さがよりわかる部分もあるかもしれない。

それでも、第1ヴァイオリンの旋律を、第2ヴァイオリンが分捕って弾いてみたり、それにヴィオラが単純な音型で応えたり。通奏低音の役割を離れたチェロが主旋律を堂々と演奏してみたり。

それはまるで4人の紳士の知識人が、音の中で対話を楽しんでいるように聴こえた。

モーツァルトの作品は、彼が10代の時の作品。
彼の父親の手紙によると、モーツァルトはイタリアへ演奏旅行へ行った際に「暇をもてあまして、カルテットを作曲して」いたそうだ。

写譜するよりも速く作曲したといわれる大天才モーツァルト。構築性よりも、単純ゆえの旋律の美しさが身にしみる。
ハイドンが同時期にしていた、創意工夫なんて、あまり気にしていないくらい無邪気で、そこにたまに耳を疑うような哀しさがころがっている。
子供が平然と恐ろしいセリフを吐くように。

なにより、演奏者は楽しそうだ。本当に、音を楽しんで弾いている。
それが舞台からダイレクトに伝わってくる。


古典派で耳を清められた分、後半のベートーヴェンはより新鮮さを増して耳に飛び込んできた。

ベートーヴェンは、もちろんハイドンやモーツァルトの四重奏曲を熟知していた。
だからこそ、それを超える作品でないと意味がない!!と意気込んでいたのだろう。

ベートーヴェンが初めて完成させて、世に送り出した四重奏曲は、他のどの作品にも負けない個性があった。

古典派のソナタ形式のひな型は、提示部に2つのテーマをもっていて、そのテーマは1つめが主調、2つめが属調であって、さらに2つのテーマは性格的に対比のあるもの、だとされている。

ベートーヴェンは最初の四重奏で、ニ長調で息の長いテーマを、それも短7度の跳躍を含む音型で書いた。
それに対比される2つめのテーマは、なんとハ長調という間違った調性で出てくる。
その直後に突如強音で、正しい調であるイ長調が高らかに鳴らされるのだ。

なんという工夫だろう!

終楽章は、「タランテラ風」と演奏者のプログラムノートにあった。
タランテラという舞曲の語源は、毒蜘蛛:タランチュラと同じだというのが一般的な説だ。
毒にあたって、もがき苦しんでいるような踊りなのか、あるいは毒を消すためにみんなで祈るように必死で踊ったのか、今となっては本当のところはわからない。

ただ、この終楽章で、演奏者は何かにとりつかれたように演奏していたのを聴いた時、あぁ、これは間違いなくタランテラなんだ…と思った。

同じベートーヴェンの晩年、四重奏曲「大フーガ」や、そして交響曲「合唱付き」の終楽章のフーガが、すでに響いている。

そう言えば、シューベルトの、最後と、最後から2つめの四重奏の終楽章も、両方ともタランテラだったっけ。
やはり彼も、音楽に憑かれていたのかも知れない。

アンコールには、モーツァルトの円熟期の四重奏からゆっくりとした楽章が演奏された。

筆の速いモーツァルトが、苦しんで時間をかけて書いた全6曲の四重奏曲「ハイドン・セット」の中の変奏曲。
その名の通り、四重奏曲の先輩ハイドンに献呈された楽譜の表紙に、「私の6人の子供たちを敬愛するハイドンに」と喩えて書いている。

こんなにも隙のない音楽は、他のモーツァルトには見当たらない。
どんな主題でも、さらりと即興で変奏してしまう天才が、変奏曲に死ぬ気で取り組んだ、って感じだ。

この変奏曲は、何かに感謝をするように、静かに終わる。

それが、演奏者たちの、「こんなにも素晴らしい音楽をありがとう」という気持ちに聴こえたとき、今日は本当にいい演奏会を聴いたんだな、という気持ちに満たされた。
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長岡聡季
ヴァイオリニスト、ヴィオリスト
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Satoki Nagaoka
PhD, Violinist, Violist, Conductor

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